活動報告

管外視察(光田議員)11/9

活動報告2016.11.25

平成 28年 11月 15日

期間  平成28年11月9日(水)

場所  アットビジネスセンター池袋駅前別館「901号室」

担当署 地方議会総合研究所

担当者 廣瀬和彦氏

 

<視察目的>

「政務活動費適正支出のチェックポイント」~最新の判例を踏まえて~

昨今、議員のカネ問題で不正が続いている。最新の判例を踏まえて適正支出の知識を付け、

より市民や市に貢献するべく受講を決した。

 

<概要>

  1. 政務活動費の制定経緯 2.国会における立法事務費との相違 3.交付対象と一人会派 4.政務活動の性格 5.政務活動の範囲と按分率 6.慶弔費・政党活動費等に対する支出 7.政務活動における判断基準(1)調査研究その他の活動の解釈(2)会派としての支出の解釈 8.費用弁償支給対象活動への政務活動費の補填 9.使途基準要綱等の法的効力 10.条例の提案権者 11.政務活動費の各費目における解釈と裁判例(1)調査研究費(2)研修費(3)広報費(4)広聴日(5)要請・陳情活動費(6)会議費(7)資料作成費(8)資料購入費(9)人件費(10)事務所費(11)その他 12.利子の取り扱い 13.政務活動費の一律支給 14.政務活動費における会計年度の考え方 15.政務活動費辞退に対する取り扱い 16.政務活動費への課税 17.解散した会派の被告適格

 

<講義内容>

講演者:廣瀬和彦氏

明治大学政経学部兼任講師・明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科兼任講師

 

不正事例を数件紹介

・2014年7月 兵庫県議会 野々村議員 日帰り出張195回 300万円支出

・2015年10月 堺市議会 小林議員 未印刷・未配布チラシ 約1040万円返還

・2016年3月 千代田区議会 政務活動費振替答申

・2016年10月 富山市議会 政務活動費不正請求

 

政務活動費制定までの経緯

(1)平成12年における政務調査費法制化以前までの経緯

昭和22年制定当時の地方自治法は地方公共団体の議会の議員に対して、報酬を支給し費用弁償を受けることができる旨規定された。

しかし地方公共団体の中には、地方自治法上に明文の規定のない通信費、交通費、調査研究費、退職金、弔慰金などを支給していた団体があった。

これから、地方財政悪化の原因の一部が地方団体における給与その他の給付制度の混乱にあると考えられ、給付制度是正措置として昭和31年に法改正され、法204条の2が追加された。これにより従来のように法律上特段の制限がなく議員個人に対し、研究費、通信費等の名目で定額を支給することは違法な支出として支給することができなくなった。

地方公共団体は、各種の諸手当の代替措置として、議会内の各会派に対し、会派の活動費用として調査研究費を法232条の2に基づき会派の調査などの活動費用の一部を補助する目的で支出した。平成12年6月1日時点では、すべての都道府県及び74.8%の市で調査研究費が支給されていた実態がある。この調査研究費は、知事又は市長の判断により交付され、多くの団体では、知事又は市長の定める補助金等交付規則を適用し、団体等に対する補助金の一種として、その補助申請、実績報告等補助金交付と同様の手続きが採られ交付。調査交付金が各種団体に対する補助金と同様の恩恵的給付とも認識され易く、そこに問題があるとの指摘があった。

 

(2)平成12年改正による政務調査費の制度化

政務調査費の法制化の必要性

市議会議員の事業化、常勤化が進展していること、平成9年7月に出された地方分権推進委員会第2次勧告において、地方分権の進展に伴い議員の活動の充実が必要となってくること、政治資金規正の強化等により寄付金等が制限されたこと等により、議員が日常的に取り組んでいる議会外での議員としての活動に対し手当てを支給しにくいとのことで、法制化の必要性が出てきた。

平成11年10月頃、全国都道府県議会議長会及び市議会議長会は、議員活動経費の要望を行う。

平成12年5月31日に地方自治法の一部を改正する法律が公布、施行されたが、政務調査の条例化については平成13年4月1日から施行することとされた。

 

(3)平成24年政務活動費へ改正

    1. 政務調査費の名称が政務活動費へ変更がなされた。
    2. 交付目的に「その他の活動」を加えて「議員の調査研究その他の活動に資するため」に変更された。
    3. 政務活動費を充てることができる経費の範囲を「条例」で定めることと規定された。
    4. 議長に政務活動費についての使途の透明性確保の「努力義務」を課す旨の規定がされた。

 

国会における同趣旨の法令としては、立法事務費が昭和28年に制定された。立法事務費の交付は会派に対してのみ行われ、議員個人に対しては交付されない。立法事務費の交付は毎月行われ、交付額は各会派に所属する議員数×65万円。各会派は、立法事務費の交付を受けるために、その会計上の処理を行うために立法事務費経理責任者を定めることが義務付けられている。領収書の添付は必要ない。

 

政務活動費の意義:政務活動費とは、議会の議員の調査研究その他の活動に資するため必要な経費の一部を充てることができる補助金または交付金である。平成13年4月1日より政務調査費が施行され、平成25年3月1日より政務活動費として施行された。

政務活動費の交付対象:法第100条第14項に「会派又は議員」と規定されている。すなわち①会派②議員③会派及び議員の3類型が想定されている。

3類型が必要な理由:①会派:政務活動費法制化以前の調査交付金が会派に支給されていた経緯と国会における立法事務費の交付対象であること。②議員:会派性を採用していない議会においても政務活動費を交付することを可能とするため。③会派及び議員:政令指定都市などの大規模な人口を要する議会においては、政務活動は、会派としての活動及び議員個人としての活動の両面があることが想定されるため。

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本講義の資料より抜粋

 

Q:政務活動中に事故が発生した場合、公務災害の対象になるのか。

A;政務活動が正規の議会活動ではなく、公務でないことから対象とならない。

 

政務活動費の性格:①地方自治法232条の2における公益上必要がある場合になされる補助金である。②政務調査の交付根拠が法律で明示されたことにより、政務調査費の法改正以前の会派に対する調査交付金と異なり、条例に規定された要件を満たせば、政策的判断を有することなく交付される交付金。

 

Q:公務による出張用務終了後に政務活動を行う場合の旅費の取り扱いはどうなるのか。

A:各議会における旅費条例の「やむを得ない事情」の解釈による。

 

Q;慶弔費に対し、政務活動費を支出することは可能か。

A:慶弔費は交際費的な経費であると認められ、さらに公職選挙法199条の2に抵触するおそれがあるため不可。

 

Q:後援会及び政党活動費に係る経費については、政務活動費から支出することは可能か。A:後援会活動は選挙活動又は政治活動であり、政党活動に係る経費については、議員又は会派が所属する政党のための活動経費であるため不可。

 

政務活動費における判断基準

①政務活動目的と市政の関連性

②政務活動方法及び内容等に関する具体説明の有無

③政務活動方法の妥当性

④政務活動と支出経費との相当性

⑤政務活動結果の保存の有無

 

Q:所属議員が実施する調査研究の内容を記載した政務調査費支出伝票を会派の経理責任者に提出し、会派の代表者である会長がその支出を承認し、その承認後、政務調査費が支出することは会派が行うに該当するか。

A:特別の取り決めがされていたような事情がない場合、内部的に決定された正規の政務調査費支出の手続きに即して、会派の名において行われたものということができる。(平成22年2月23日最高裁)

 

費用弁償とは、実費弁償と同じ意味であって職務の執行に要した経費を償うために支給される金銭をいう。議員が費用弁償を受ける権利は公法上の権利である。

 

使途基準マニュアル等の裁判における有効性について

各市議会において政務調査費使途基準のための要綱やマニュアルを作成する例が多い。

マニュアルや要綱等の法的効果については判示あり。

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本講義資料より抜粋

 

議員の調査研究に資するために必要な経費の解釈

Q:法100条12項にいう「議員の調査研究に資するため必要な経費」とは、その文言上、調査研究に直接用いられる費用に限られるのか。

A:政務調査費交付制度の制定の趣旨に鑑みると、議会の活性化を図るため議員の調査活動基盤を充実させ、その審議能力を強化させるという観点から見て、調査研究のために有益な費用も含まれる。

 

政務活動費の条例の権者

地方自治法100条14項で特に条例の提案権者に縛りをかけていないため、長と議員の双方が提出可能である。政務活動量の必要量や適性費用は議員本人が熟知しているので、本来は議員が提示するのが望ましい。

 

自動車の経費について

自動車にかかる経費については、個人で自動車を所有している場合、所有していない場合に分けて考える必要がある。政務活動費は調査・研究活動によりかかった経費に対して支出すべきものだからである。リースをする費用については、議員が政務活動のために自動車をリースで保有することも合理性を欠くとはいえない。

ガソリン代における裁判例の考えは大きく分けて3つある。

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本講義資料より抜粋

 

自動車の原価償却費

自動車を保有して調査研究活動に利用すること自体を違法ということはできず、取得した自動車の減価償却費に政務活動費を充てること自体も直ちに違法ということはできない。ただし、減価償却費全額に政務活動費のみを充てるのは違法であり、上記減価償却費を実際上の調査研究活動のための利用とその他の目的のための利用によって按分して充てるのが相当である。

 

<所感>

昨今、議員の政務活動費に関するニュースが頻繁に取りざたされている。不正の温床とも言われかねない政務活動費、適正に支出するには第一に使用ルール(知識)をしっかり把握することが大切である。使用目的の申請等で事務局から厳正なチェックを受け、後払い方式であっても不正受給は発生するという忌々しき問題である。兵庫県議会議員の号泣会見で話題となった「政務活動費」は、問題の多い制度であるとメディアでも頻繁に取り上げられている。このたび改めて、最新の判例を交えた政務活動費の適正支出について、知識を取り入れてきたが、合法であっても市民感覚として許されざるものはメディアで印象操作され、為政者としての信用失墜に繋がりかねない。違法、不正ではなくても、一般常識・社会通念としていかがなものか、常に市民感覚を忘れず、自分を律し冷静に自粛する責任があるのだと痛感する。また自治体やその自治を管轄する裁判所によって判決が変わるので、裁判所の方針や判例を把握し、政務活動に資する行動を取る必要がある。

たとえば、はがきや切手等の大量購入の是非について、はがき・郵便切手等を大量に購入しストックすることは可能であると、平成22年3月26日 熊本地裁、平成20年11月10日 松江地裁で出ている。大量購入・ストックは違法ではないのだが、郵便区内特別郵便物等、割引制度の整っている大量配達制度があるため、市民としては、公金でわざわざ切手を購入しなくてもよいのではと自然に考える。違法ではないが、換金するために大量購入したのかと嫌疑をかけた事例である。

公金であるという自覚をしっかり認識し、政務活動に資する適正な支出をすることが求められる。富山市議会では、新人議員向けに政務活動費の使い方に関する説明会が開催された。

 

「新人市議13人に政務活動費の使い方説明会 富山市」NHK NEWS WEBより

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161114/k10010768221000.html

 

合法であっても市民感覚として正当性を問われる政務活動費の使用方法は、ごとに基準が流動的である。違法な支出は当然許されないことは言うまでもない。これに加えて合法な支出に関してもその時代の市民感覚に合わせ正当性を検討する必要性がある。