活動報告

日本維新の会 神戸市会議員団 会派視察 (1/23~1/24)

活動報告2017.02.03

視察報告書

■訪問経緯と目的

神戸の歴史を振り返ると、戦前には航空機製造会社が存在し、地域の雇用に一定の役割を果たしておりました。また、現時点でも航空機メーカーや部品メーカー等が集積しており、長年の技術力を開花させていく可能性があります。

三菱重工業が国産リージョナルジェットMRJの主翼の量産開始に向けて準備を進めていくに伴い、神戸でも産業界が中心となって新規参入や受注拡大に向けた行動に移しており、神戸経済の発展にとっても重要と考えます。

一方で、名古屋市では、「アジアNo.1航空宇宙産業クラスター形成特区」の指定を受け、航空宇宙産業の世界的な拠点となることを目指し、地域一丸となって航空宇宙産業の振興に取組んでおられます。MRJの航空機製造に向けての名古屋市での施策を参考に、神戸でも応用できる展開があるかどうか調査するため訪問。

 

■2017年1月23日(月):視察1日目

※午前の訪問先:名古屋市役所

<担当部署・担当者>

名古屋市 市民経済局 次世代産業振興課 課長 筒井 利和 様

名古屋市 市民経済局 次世代産業振興課 係長 橘  恵美 様

○内容

国から「国際戦略総合特区」に認定されており、中部圏はこれまでの経緯を含めて航空宇宙産業の集積地としてポテンシャルがあります。中部5県では、日本における航空機・部品生産額の約5割、航空機体部品では7割以上を生産しております。また、既存の機体メーカーである三菱重工業、川崎重工業、富士重工業の生産拠点があり、ボーイング787の日本分担率35%を占めています。加えて、東レは、航空機機体軽量化に向けた炭素繊維複合材をボーイング社に供給しております。

研究開発拠点においては、JAXA名古屋空港飛行研究拠点や三菱重工業、東レの研究施設、名古屋大学の研究センター等があります。

産・官・学の連携体制としては、社団法人中部航空宇宙技術センターが設立され、事業内容としては①調査・研究事業②情報収集・提供及び普及啓発事業③技術支援事業④人材育成事業⑤国内外関係機関との連携及び交流事業⑥クラスター形成とともに他産業との融合化支援事業⑦損害保険の代理店業務を実施しております。

 

以下、個別具体的な名古屋市の航空宇宙産業振興を抜粋して記載します。

  1. 設備投資 促進助成
  2. 内容としては、航空宇宙産業に関する認証・認定を受けている中小企業者で、1企業の補助限度額は1,000万円。(補助対象経費の10%以内)
  3. 航空宇宙産業 販路拡大支援
  4. 内容としては、通訳による商談支援や事前商談実習の準備、マッチング支援事業を実施。
  5. 航空宇宙産業 人材育成

内容としては、中小企業への人材供給が安定・継続して行われるように、学生を対象にセミナー等を実施。

 

■2017年1月23日(月):視察1日目

※午後の訪問先:三菱重工業(株)名古屋航空宇宙システム製作所             <担当部署・担当者>

三菱重工業(株)交通・輸送ドメイン MRJ事業部 事業管理グループ長 尾根 敬介 様

三菱重工業(株)交通・輸送ドメイン MRJ事業部 事業管理グループ  山下 和敏 様

○内容

名古屋空港近くの工場を視察したが、写真撮影等は禁止。訪問当日には、ANAへのMRJ引き渡しが遅延するニュースが流れ、2018年半ばから2020年半ばへと変更となり、約2年の遅延となります。

工場では、主翼と胴体を結合させる構造ラインと、座席やエンジンを取り付ける艤装ラインからあり、開発担当者からは実際にモデル機体に乗らせていただき、座席の形状や座席空間の説明がありました。また、製造部品については、極力日本製の部品を使用したいが、世界基準で使用できる部品が少ないことが指摘されており、これから日本製の部品メーカーが活躍されることが期待されます。

 

○所感

神戸市においても、MRJが量産体制に入れば、機体の一部を民間企業が担うことが予想され、今から民間レベルでの連携システムが構築しやすい環境整備を行政は実務レベルで推進していく必要があると考えます。補助メニューの充実は必須であるが、人材育成に重点を入れていく必要があり、産官学が一体となった組織を立ち上げることも一つの選択肢であろう。今から、来るべき時に備えて計画を進め、神戸経済の発展に航空機産業が寄与するように環境整備しなければならない。アメリカやヨーロッパ大陸等の航空機メーカーと対峙していくには、日本車のように環境性能や技術力で勝負いくことが求められます。民間企業が活躍できるような環境作りを自治体の枠に留まらず国に対しても提言・要望して参ります。

 

■2017年1月24日(火):視察2日目

訪問先:豊田エコタウン

<調査項目>

・低炭素社会の取組み・水素ステーション・スマートハウスについて

<担当部署・担当者>

豊田市役所 企画政策部 環境モデル都市推進課 副課長 粕谷 忠弘 様

豊田市役所 都市整備部 交通政策課 課長 西 和也 様

 

○内容

2009年1月23日に政府から環境モデル都市として選定された豊田市。環境モデル都市とは、世界の先例となる低炭素社会への転換を進め、国際社会を先導していくという方針に基づき、温室効果ガス排出の大幅な削減など低炭素社会の実現に向け、高い目標を掲げて先駆的な取組みにチャレンジする都市として国から選定された都市を指す。豊田市では、二酸化炭素削減目標(1990年度比)として、長期目標(2050年)必達50%削減・チャレンジ70%削減、中期目標(2030年)必達30%削減・チャレンジ50%削減を掲げ、目標達成に向け「交通」「民生」「産業」「都心」「森林」の5分野を重点的な取組み分野と位置づけ、平成25年度までの5年間、第1次アクションプランを実施した。平成26年度からは、第1次プランを継続・発展させ、さらに国内外への横展開やエネルギー・モビリティの成果の活用、都市と農山村の連携モデルの構築など、第2次アクションプランでの取組みを始めている。

 

<交通の取組み>

  1. 公共交通の利便性の向上

・基幹バスと地域バスのネットワーク整備。

・公共交通の駅と最終目的地間の数キロ程度の移動に対し、超小型EVを用いたカーシェアリングサービスの提供。

  1. 次世代自動車の普及に向けて・インフラ整備として、市内公共施設を中心に充電施設を39箇所50基整備。エコフルタウンに水素ステーションを誘致など。
  2. ・FCV/PHV/EV車両購入補助(最大33.5万円)、超小型EV補助(最大3万5千円)、充電設備補助(最大5万円)など。

 

<民生の取組み>

  1. スマートハウス減税として、創エネ=太陽光発電・畜エネ=蓄電池・省エネ=HEMSをすべて備えた家には、新築・既築を問わず固定資産税を1/2減免。
  2. 再生可能エネルギー発電設備減税として、国の認定を受けた10kw~2000kw未満の発電設備の固定資産税1/3減免。
  3. 電気軽自動車減税として、電気自動車・小型電気自動車の軽自動車税を10/10減免。

 

<産業の取組>

  1. 市内事業所への環境経営の推進や、省エネ診断による省エネ効果の見える化・改善策実施を支援し、サスティナブル・プラントへの移行促進。
  2. 再生可能エネルギーの普及促進に向け、総合特区の金融支援の活用やエネルギー事業者と民有地とのマッチング事業等のほか、発電設備への減税。
  3. 産学官連携の取組みである環境・エネルギー分野の産業育成。

 

<都心の取組み>

  1. ヒートアイランド現象の緩和などを目指し、都心中心部における一定要件の建物の新築及び増築に対し緑化率の義務化。
  2. パーソナルモビリティの公道実証実験を開始し、中心市街地の回遊性、短距離型の新しい移動手段、公共交通連携などの有効性を検証。
  3. 豊田市駅前通りの商業・業務・都市型住宅等の拡充により中心市街地の活性化を目指し、施設や区域に省エネルギー設備や緑化を積極的に導入再開発事業。

 

<森林の取組み>

  1. 豊田市の森林は市域の70%を占めており、うちスギ・ヒノキの人工林は森林面積の約50%を占め、その2/3は過密人工林と推定されており100年先を見据えた森づくりと20年間で過密人工林を一掃する「豊田市森づくり構想」を策定し、健全な森づくりを実施。
  2. 里山くらし体験館「すげの里」、まちとむらをつなぐプラットホームとして都市と農山村の交流をコーディネートする「おいでん・さんそんセンター」などを通じて、里山を守り・里山に暮らす取組みを行う。

 

○所感

これらの取組を見える化し、分かりやすく伝える情報発信拠点として豊田市では「ミライのフツーを目指そう」をテーマに、市民・地域・企業が力を合わせた「とよたEcoful Town」を開園。ここでは、都市部から中山間地、山間地と広がる豊田市の地域特性をコンパクトに再現し、新たな産業振興の拠点としても活用している。特筆すべきは、施設内に水素製造装置を備えたオンサイト型である水素ステーションが整備され、燃料電池バスやトヨタ車の「MIRAI」への水素充填を行っていることである。市内の道路を走行する「MIRAI」を数台目にしたが、水素ステーション整備=次世代自動車の普及に繋がることから、神戸市においても水素ステーション整備は喫緊の課題である。

以上

管外調査報告書のPDFファイルも参照ください。