活動報告

平成28年 5月17日~22日 日独友好神戸市会議員連盟ドイツハンブルク行政視察報告 3

活動報告2016.05.27

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~写真は再開発地区のハーフウェンシティにて~

 

 

5月19日(木)

 

9:15~

■港湾クラスター政策について

Dr.Kai-Dieter氏

 

HPA(HamburgPortAuthority)は、港湾に集積する船舶業、運送業、IT技術産業、経営アドバイザー、保険・金融業、官庁、ロジステックス教育・研究所などを一本に束ねるために2006年に設立され、港湾のスマートポート化を目指し、CO2削減、イノベーション(荷役積み替えの電動化、デジタル化)を実施している。ハンブルク港は北海から100Kmほど内陸に入っており、エルベ川に面している。海から離れているので港湾としては、不利的な位置付けにあると考えられがちだが案外そうではなく、海に面した港と比較して陸送がその分短縮されるために逆に有利である。鉄道、高速道理が計画的に配置されており、決して面積は広くないが狭い港ならではの強みを活かし、効率重視の港湾施設を作る必要があり、世界一を目指して計画的にすべてが配置されている。後背地に東ヨーロッパ、北欧などをカバーしており、ハンブルクより20Km離れた地点に鉄道のハブ施設を設置し、欧州各国への配送を実施としている。

積み荷は1.32億トン、コンテナ取扱量900万TEU、欧州第2位、世界第9位の規模。昨年はロシアへの経済制裁の影響、中国の景気低下、フィダー整備等の遅れで業績はあまり良くなかった。2015年度の輸出入がほぼ50%であることが特徴であり、荷物は58%がトラック、41%が鉄道で運ばれる。2025年度のコンテナ取扱目標を2035万TEUとしているが、根拠をたずねるとウクライナ、ロシア、中国の景気回復とドイツ国内の景気を考えるとこれぐらいなる、とのことで明確な根拠がある訳ではないことが分かった。担当者は、目標はそれらの現実を見ながら変更していくものだとも言っており楽観的希望観測も入っていると感じた。また、クルーズ船発着もハンブルク港は主要産業として育っている。

HPAは実際賃貸業のようなもので、インフラ整備をしっかりと行い、産業界は効率良い荷役作業ができる条件のもと賃貸契約を結び事業を行う。2014年にスマート・ポート・ロジスティクス・プロジェクトを開始。港湾全体をデジタル化で監視し、スマートフォンとタブレットですべて通信可能とするシステム構築を行っている。例えば、航行中の船がどこに運搬車が待機しているのかを検索できる、また、トラック運転手は空いている駐車場を難なくみつけることができるよう、最適の移動を確保しエネルギーの効率を高めている。また、積み荷運搬をすべて自動化し、バッテリーの充電は再生エネルギー発電のピーク時にのみ発電している。

 

10:15~

■再生可能エネルギークラスター

Jan Rispens局長

 

2010年発足したこのクラスターは、ハンブルクがドイツのクリーンエネルギーセンターになることを意味している。北ドイツでは風力発電で100%のエネルギーを補っており、南ドイツに送電していくことが今後予定されているが、送電線周辺地域の住民の反対によって進んでいない。ドイツの再生可能エネルギーは風力、太陽光、バイオマスが主流となっており、国内には関連企業が1466社あり、その内53%がハンブルクにある。国内の関連産業の雇用数は24700人、内ハンブルクが59%占めている。再生可能エネルギーは1990年には全エネルギーのうち4%しか占めていなかったが、2015年は25%を占めるようになってきており、2022年原発撤廃に向けて2020年までに35%を目標にしている。この数字は十分に実現可能な数字であると考えている。

ハンブルクの再生可能エネルギークラスターは、風力発電関連企業500社が参加しており、世界最大の風力発電クラスターを形成しており、市長はハンブルクを風力発電の世界の首都になることを目指している。シーメンスのような重電会社、電力会社、風力発電機械製造会社、建設、保険、銀行、大学、フラウンホッファ研究所、機械・自動車検査機関(TUEF),弁護士会等がメンバーとなっている。主として、洋上風力につき研究開発、法整備が行われており、海上で生産された電力をいかに陸上に運ぶかというグリッドの敷設問題が課題とされている。洋上風力発電の余剰電力を使い洋上で水素を生産。陸上に貯蔵し、水素発電やガスパイプ網を使い産業用として輸送する計画である。

また、全独の太陽光大規模発電(ソーラーパーク)計画の中心地で、プランニングの会社およびファイナンス会社が集積している。それ以外にも、菜種、コーンの伝統的栽培地という条件を利用してバイオマス発電を実施(年間6千万Kw)。港湾では民間会社はバイオ燃料を生産し、ハンブルクヴァッサー(水道局)は下水からガスを収取し発電に利用している。

課題としては、交通モビリティの再生可能エネルギー使用率が5%と数年間横ばいで伸びていないところである。

 

11:10~

■HySolutions-EV、燃料電池、水素自動車を中心にやっており、半官半民で構成されている。ドイツ政府が掲げる2020年40%排気ガス削減を目標にして、交通モビリティにおける排気ガス「0」社会の実現を目指している。ハンブルク市内の長期使用する市内バスの排気ガス2020年までに「0」目標のため、EVと燃料電池のハイブリッド車を市内から空港まで走らせている。EU内78都市において、排気ガスが出ないバス開発を来年より始めるにあたりEUより80~90億円の補助金を受ける予定。

日本の川崎重工の水素エネルギー技術開発は素晴らしいものがあり、是非とも協力してきたいと考えている。

 

11:40~

■SennvionSE(セビオン社)

Fernando Soares氏

 

三菱重工業等5社から成り立っているジョイントベンチャーでウインドパワーの会社である。主に風力発電用タービンを製造している。

陸上発電から始まり、海上発電と発展していった。オンショアをモデルファイしたタービンを使用している会社が多い中、オフショア専用タービンを開発製造している。日立も日本プログラムに参加して、開発が進んでいるがそれよりも大きなタービン出力により多くの電力が生み出すことができる。日本市場にも本国より小さいたタービンを採用しているが、日本のグリッドが地方により違う等複雑なため、西日本と東日本それぞれの対応用を作っている。また、台風、地震、雷などの地理的な厳しい条件が日本にはあるが、わが社は対応してきている。今後は、風力→水素→輸送する、という流れを発展されていくことができれば、新たなエネルギー革命になる。

 

14:00~

■ハンブルク清掃局(SRH)

Lukas Schafer氏

 

同清掃局は廃棄物および資源管理においてはハンブルク最大のサービス業者です(民間業者)。当局は換価可能廃棄物の回収、廃棄物処理、清掃サービスを一手に行っており、収入高が約3億3200ユーロ(約500億円)、年間利益230万ユーロ(約2.9億円)の実績があります。

ハンブルクでは4種類の分別収集を行っており、プラ類、有機ごみ(生ごみ)、紙類、それ以外と分けてられています。ドイツの特徴は熱処理の残留物99%が再利用に回されています。ビュッツベルクにバイオガスと堆肥事業所を保有しており、ドイツ最大の有機家庭ごみの発酵設備を経営しています。熱処理したエネルギーは熱利用廃棄物再利用技術を利用して、地域暖房ネットワークに接続された約45万世帯に地域暖房を供給されています。

また子会社に家具、リサイクリング専用会社があり、利用再生家具を修理、補修して再販しています。その他、冬場の除雪や道路清掃も行っており交通の安全をも担っています。

ハンブルク清掃局は、単なる清掃業者ではなく、熱エネルギー発電と共に、再生エネルギー生産設備(風力発電、太陽光発電、バイオガス生産)の運営経験を活かして化石系燃料のエネルギー効率と二酸化炭素排出量削減処置の実務分野でクリーンエネルギーセンターを目指していくとのことです。

 

16:00~

■ハーフウェンシティを視察

 

ハーフウェンシティ地区は、ハンブルクの市街を流れるエルベ川沿いに位置する。かつては港として繁栄した歴史があるが、近年のコンテナ船の大型化に伴い、1960年以降は貨物保管倉庫としての機能のみを担うようになり、閑散とした低未利用地となっていた。その後2000年以降、都市再生の再開発のプランが完成して開発スタートし、開発面積157㏊、東西3.3Km、南北1Kmに及ぶその中に、現在はアパート6000戸余り、人口1.5万人が居住し、40000人以上の雇用を生む業務施設、商業施設、文化施設、コンサートホールなどが建設されている。

スマートシティの実現を目指した、市内のハーフウェンシティ(ポートアイランドに相当)はヨーロッパ最大のウォーターフロント開発地であり、特長としてはCO2の排出減、熱、電気を総合的に実験していく街である。またスマートシティ構想を掲げており。風力発電で作った電気をEVバンに使用して、港湾運搬用に使用しており、余った電気を水素に変換する実験を行っている。ハンブルクが気候変動対策に熱心な理由は、ハンブルク中心を流れるエルベ川が気候変動により度々氾濫し、これまで多くの被害が発生している。現在も春先には雪解けによって、エルベ川の水かさが増すため街全体が底上げされており増水等の対策が取られおり、防災体制も整えられている。

実際に、センターで街の成り立ちの説明を受けた後、ハーフウェンシティ内を徒歩で視察した。統一感があるレンガ色の町並みで、周辺の町並みと調和しており再開地区の違和感はない。オープンデッキの飲食店があるなど、1階部分は飲食、物販店になっており、2階以上が住居になっているような町並みである。各通りには、世界の港町に付した名前が付けられており、横浜、神戸ストリートなどもある。大学なども併設されており、居住者用の公園も芝生が植えてあり、私たちが訪れた時も住民らしき方々がBBQなど楽しんでいた。環境先端都市ということもあり、環境保護団体グリーンピース本部もこの地区にあった。