管外視察(光田議員)11/28
活動報告2016.12.13
期間 平成28年11月11日(金)
場所 剛堂会館会議室(東京・千代田区)
担当署 地域科学研究会
担当者 飯田様・大石様
<視察目的>
スポーツツーリズム時代の経済・コミュニティの活性化戦略
「スポーツ観光まちづくりの条件整備と推進方策」
~2020年へ向けたスポーツ熱を生かすー観光資源としての自治体スポーツ施策と参加型交流人口の活用~
<概要>
1.スポーツ都市の戦略とまちづくりの連携
~自治体に求められるスポーツツーリズムの育成・活用方法~
講師:原田宗彦氏 早稲田大学スポーツ科学学術院教授
①インバウンド観光の発展とスポーツツーリズム
②スポーツイベントと都市
③スポーツに親しむまちづくり
①インバウンド観光の発展とスポーツツーリズムの実体
急増する世界の観光事業
●国際観光客到着数(UNWTO)
5.29億人(95年)→8億人(05年)→10.87億人(13年)→11.38億人(14)
北東アジアの伸びは北アメリカ(8%)に続く7%
●日本のインバウンドの急増
「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」議長:安倍晋三首相
2020年に4000万人、2030年に6000万人の目標を掲げている。
2016年1月から8月で1660万人(24.7%増)
●スポーツツーリズムはインバウンドの10%を目指す。
爆買いから体験へ。
インバウンド急増の背景
・円安、ビザの発給要件の緩和、アジアの中間層の勃興、LCC、クルーズ船の増加。
・情報の流通革命(SNS)
・将来的発展の余地→スノースポーツ
経済的に余裕が出てくると、最初にすることが海外旅行である。
訪日外国人の増加に際し、wi-fiの整備は重要である。
都市近郊スキー場の復活
・六甲スノーパークの入園者数の推移
平成20年度 約600人→ 平成26年度 16750人(外国人団体入園者数)
年々訪日外国人観光客の利用数が増えている。
スポーツツーリズムとは、スポーツで人を動かす仕組みづくり。
隠れた資源であるスポーツを旅行商品化し、見る、する、支えるスポーツという新しい旅の目的と需要を創出する。
アトラクションとしてのスポーツイベントの重要性。
スポーツツーリズムの制度化
2008年 観光庁の設立
2010年 スポーツツーリズムの提唱
2011年 スポーツツーリズム推進連絡会議
2012年 スポーツツーリズム推進基本方針の策定と
(一社)日本スポーツツーリズム推進機構(JSTA)の設立。
2015年 スポーツ庁の設立。
JSTAの役割
●自治体+企業+スポーツ団体のネットワーク形成
カンファレンス、コングレス、セミナー
●推進母体としてのスポーツコミッションの組織化
●インバウンド観光の促進
スポーツツーリズムとクルーズ船
●2015年度の訪日クルーズ旅客数が前年度比2.7倍(寄港回数:1452回)
●2020年に100万人という目標値を前倒し。
ハイブリッド型産業の急成長
●メガ・スポーツイベント
・メディア価値にともなう放送権料と協賛金収入の急増。
・2019ラグビーワールドカップ、2020東京オリンピック・パラリンピック、
2021ワールドマスターズゲームズ。
●プロスポーツ
・施設+用具・用品+メディア+ファンビジネス。
●スポーツツーリズム
・スポーツで人を動かす仕組みづくり。
スポーツイベントが持つ磁力
●スタティック(静的)かつ持続的な磁力
美術館、博物館、テーマパーク、水族館の他、寺社仏閣などの歴史的建造物、
景色の優れた名所旧跡や自然が織りなす美しい景観(富士山、三保の松原)
⇓
●ダイナミック(動的)かつ一時的・継続的な磁力
スポーツイベントは、一時的・継続的に強大な磁力を発生することが可能
→都市改造や地域活性化。経済効果30億円
大規模イベント(オリンピック等)の後に何を残すか?
ここにスポーツツーリズムの可能性がある。
出典:Gratton, C. & Preuss, H.(2008) Maximizing Olympic impacts by building up legacies.The International Journal of the History of Sport 25(14), 1922-1938 より三菱総合研究所作成
原田氏 資料より抜粋
まとめ
●発展するインバウンド観光とスポーツで人を動かす仕組みづくり
・都市集客装置としてのスポーツコンテンツ
●スポーツイベントと都市
・無限に広がるスポーツイベント
・メガ・スポーツイベントと都市
・社会問題を解決するスポーツイベントの増加
●スポーツに親しむ町をどのようにしてつくるか
・無電柱化、バリアフリーのまちづくり
2.文化・スポーツイベント等の誘致・支援を通じた地域経済の活性化を目指して
講師:吉田 賢氏 新潟市文化・スポーツコミッション事務局課長
1.文化・スポーツコミッション設立拝啓
2.文化・スポーツイベント等の誘致・受入支援
3.来訪者を観光に導く取り組み
4.プロスポーツクラブとの連携
5.新潟シティマラソンへの海外ランナー誘客
設立経緯
基本方針:文化会合・スポーツ大会等の誘致・支援については、これまでMICE誘致推進の一環として取り組んできたが、これらが、交流人口の拡大や経済波及、都市ブランドの認知・発信への期待が極めて高いことから、官民一体となった誘致・支援の専門組織「(仮称)新潟市 文化・スポーツコミッション」を立ち上げ、プロ・アマ問わず積極的な誘致活動を戦略的に展開するとともに、受入れ・開催支援等を一元的に行うことにより、文化会合・スポーツ大会等の開催を促進し、本市のさらなる文化度の向上・スポーツの振興と経済活性化を目指す。
平成24年7月~8月 「スポーツコミッション勉強会」、「先進地視察(さいたま市)」
平成24年9月5日 「スポーツコミッション設立検討会」を設置
~平成25年3月28日 計4回開催
平成25年7月2日 「文化・スポーツコミッション設立準備委員会」を設置
~平成25年10月9日 計3回開催(ほか文化・スポーツ部会 各3回開催)
平成25年9月30日 事業予算市議会議決(9月補正)・・・事業費・人件費等
平成25年10月25日 「新潟市文化・スポーツコミッション」設立
来訪者を観光に導く取り組み
〇イベント参加者宿泊先フロントにウェルカムボードを設置
〇観光事業者及び文化・スポーツ関係団体とのパートナーシップ形成のための観光連携に関する意見交換会・セミナー等開催
〇イベント会場に観光案内ブースの設置(回遊促進)
〇イベント参加者へのアルビホームゲームチケットプレゼント、同時期開催イベント等の情報発信(回遊促進)
〇イベント主催者へのエクスカーション提案(回遊促進、主催者支援を通じた誘致活動)
新潟シティマラソンへの海外ランナー誘客
台湾ランナー誘客事業
<平成26年度>
①「マラソン&サイクリングジャパンin台湾」への出展
②「台湾メディアと旅行会社を対象とする招へい事業」の実施
<平成27年度>
①台湾エージェントへのセールスを継続
→新潟シティマラソンへの台湾ランナー誘客成功
<平成28年度>
①台湾エージェントへのセールスを継続→中国ランナーの参加(36名)
3.スポーツを活用した総合的なまちづくりの推進
~健康で活力ある「スポーツのまち さいたま」の実現をめざして~
講師:小柳 昌彦氏 さいたま市スポーツ文化局スポーツ部
1.「サッカーのまち さいたま」について
2.「さいたま市スポーツ振興まちづくり計画」について
3.「さいたまスポーツコミッション(SSC)」について
4.大規模スポーツイベントの開催について
「さいたま市スポーツ振興まちづくり計画」について
平成22年4月 さいたま市スポーツ振興まちづくり条例施行
平成23年3月 さいたま市スポーツコミッション基本計画策定
平成23年7月 さいたま市スポーツ振興まちづくり計画策定
平成23年8月 スポーツ基本法施行(国)
平成23年10月 さいたまスポーツコミッション設立
平成25年10月 さいたまクリテリウムbyツールドフランス開催
平成27年11月 さいたま国際マラソン開催
平成28年3月 さいたま市スポーツ振興まちづくり計画改訂
ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム
・スポーツの振興及びスポーツを活用し、地域経済の活性化などを図ることを目的に、環境、健康、経済など、多様な分野で多くの社会的効果が見込める自転車の世界において、象徴的なイベントである「Le Tour de France」の名を冠した、世界初の自転車競技イベントを開催し、スポーツで日本一笑顔が溢れるまちづくりに寄与する。
・また、世界に向け、震災支援への感謝の気持ちを伝えるとともに、サイクリングマーケットの拡大や自転車文化の醸成に貢献することも目指す。
観客数 第3回大会 約9万5千人
4.徳島県阿南市 地域で盛んな野球でまちおこし
~「野球のまち阿南構想」のプロセスと成果~
講師:田上 重之氏 阿南市産業部野球のまち推進監
1.野球のまち推進協議会と野球のまち推進課の設置
2.プロ野球よりも草野球・草野球ほど儲かるスポーツはない
3.地域の特性を活かした事業の発掘
4.市民・マスコミが感動する事業にするには何が必要か
5.「市民が支える野球のまち阿南」とは
なぜ野球なのか
・野球は国民的スポーツであり、高齢化社会に合致している。
地域の特性に合った事業とは
・人口7万5千人の四国・南東の端にある市にプロ野球は来ない。
・プロ野球の誘致には施設の整備に莫大な費用がかかる。
・プロ野球の合宿は長くて3週間、1年間続く事業が目標。
・盛んな野球を活かして還暦・早起き・少年野球大会等を最大宿泊人員である500人に合わせて計画。
地域の特性を活かした事業の発掘
①関西に近い
②四国霊場詣りに代表されるお接待の文化
③郷土芸能の活用
・全国的に有名な阿波踊りによる歓迎セレモニーの実施
<所感>
神戸市は、山と海、異国情緒あふれる街並みを始めに、魅力的な舞台がある。近年の訪日外国人観光客は、「物を大量購入する」、俗に言う「爆買い」から趣向が変わり、個人で訪日する人も増えている。沖縄では、ルーズ船で自分の自転車とともに訪日し、サイクリングを楽しむ人も増えている。
神戸は港が市街地に近く、このようなスポーツを楽しむ訪日外国人観光客を取り込むには最適な街である。先日のクルーズ船にて神戸港に到着した観光客は、100台以上ものバスに乗る乗船客数にも関わらず、神戸には立ち寄らず、大阪や京都を観光している。これまで神戸市は、神戸マラソン等に力を入れてきたが、スポーツに特化した組織、たとえば、スポーツコミッションを立ち上げ、スポーツツーリズムをうまく活用することにより、さらなる地域経済の活性につなげなければ、観光収益は困難である。現在の神戸市には観光客にとって魅力あるイベントが少ないという、厳しい状況である。
さいたま市では、市長が渡仏し、本場である「ツール・ド・フランス」を視察、「ツール・ド・フランス」の名前を冠した自転車レースを開催する契約を交わした。これは日本国内でさいたま市のみであり、毎年10万人以上の観客が集まる。前日から選手のファンが集まることにより、宿泊業界、飲食業界を始めとするさまざまな業界も潤うなど、地域経済に寄与している。
「東のさいたま、西の神戸」となるべく、「ツール・ド・フランス」の名前を冠した自転車レースを関西では神戸で開催するなど、同大会の誘致を検討するなど、より一層のスポーツツーリズムを推進していくべきだと考える。これは神戸マラソンに匹敵するイベント性の高い自転車文化を根付かせ、地域経済の活性に加え、より「低炭素社会」という、市民の意識も高まると考える。
以上